通り庭の家
2019.6
北海道恵庭市
北海道恵庭市に60代のご夫婦のために計画した住宅です。恵庭市は北海道の玄関口である新千歳空港と北海道の中心である札幌市との中間に位置する恵まれた交通アクセスと、穏やかな気候風土もつ人口約7万人の町です。
敷地内にはご主人が経営する会社と会社の駐車場、オーナーの既存住宅、既存住宅と渡り廊下でつながる以前親が住んでいた古家が建っている状況でした。
本計画では、親の古家とオーナーの既存住宅を解体し、住宅を新築すると共に会社の駐車場増設を行いました。
ヒアリングに伺った際、ご夫婦は渡り廊下でつながる既存住宅と古家を上手に使って生活しているのが印象的でした。
食事はご夫婦で既存住宅で一緒にとり、ご主人の身支度は古家で行い、奥様は日中既存住宅で過ごし、ご主人は仕事の帰りが不規則なため古家で就寝するといった感じです。
今回の計画ではこの生活スタイルやご夫婦の距離感のようなものをできるだけ踏襲した建築を目指せないかと考えました。
また、ご主人は仕事中も会社と住宅の行き来が多いため、前面道路と反対に位置する会社側にもアクセスできる建築が良いと考えました。
そこで、建物は小さな箱に分割し、それらを数珠繋ぎに並べて小さな街並みのようなものを持つ住宅を提案しました。小さな箱は陸屋根と三角屋根の混合とし、外壁もそれぞれ左官塗りと板張りと異なるものを採用しています。二つある三角屋根の一つはご主人の家、もう一つの三角屋根は奥様の家としてそれぞれの寝室を計画し、お二人の従来の生活を建築的に表現しました。また、箱を数珠繋ぎに並べることで住宅の周りに小さく囲われた居場所がいくつも現れます。それらは、中庭や、ウッドテラス、物干し場、植栽コーナーとなり、家の中だけでなく周りにも賑わいを与えてくれます。次に、それらを貫通する半屋外の通り庭を設けました。前面道路と反対側に会社があるため、住宅の玄関から通り庭を通って前面道路側にも会社側にもアクセスできるようにするためです。この通り庭にはたくさんの異なる要素を付随させました。ルーバー越しに光が入る場所、三角屋根の内部、外壁がくりぬかれたベンチのある場所、玄関ドア、中庭の一部になっている場所、物置、樹木のある箱庭、キッチンの様子が見える窓などです。
この通り庭が利便性だけでなく、ご夫婦がここを歩く時に喜びや楽しさを感じて、心の拠り所になるような場所を目指しました。
設計:堀部太建築設計事務所
施工:株式会社 宮崎組
撮影:佐々木育弥
規模:木造2階建て
面積:延139m2(42坪)