猿払の家
2019.10
北海道猿払村

日本最北の村として有名な北海道猿払村に計画した住宅です。
猿払村は東側のオホーツク海、西側の丘陵性山地に挟まれた自然豊かな村で人口約 2800 人の小さな村です。
オーナーは村の主要産業であるホタテ漁を生業としている 20 代のご夫婦と子供1人の3人家族。計画敷地は職場である港と役場や住宅街のある鬼志別地区との間に位置する市街化調整区域で、周辺には同じ漁業を生業とする方々の住宅が建っており、今後も漁業関係者の住宅が増えていくことが予想される地域です。
オーナーからの要望の中に「室内と室外の間の温度の空間がほしい」というものがありました。そのような空間があれば、わざわざ室外に出なくても気分をリフレッシュすることができるのではないかとの考えです。
たとえば、朝目覚めて寝室よりも少し涼しい空間で温かい珈琲を飲むことは、気持ちよく心が落ち着くでしょうし、家事の合間に涼しい空間で休憩するのも心地良さそうです。涼しい空間は活発に遊ぶ子供の遊び場にも適しているかもしれません。
そこで、この「室内と室外の間の温度の空間」を家の中心に配置し、リビング・ダイニング・キッチン、水廻り、洋室、寝室などで囲うような計画とすることで広場のような空間を持つ住宅を提案しました。
各室と広場に接する壁には内窓を設けることで、賑やかな広場となると同時に内窓を開け閉めすることで広場の温度を調整することも可能です。
リビングの大きなガラス内窓を閉めているとリビングと広場では温度差がある状態を保ち、開けると広場からのひんやりした空気がリビングに流れます。
また、開けたままの状態で暖房することで広場とリビングの温度差がなくなり、広場とリビングを一体の空間として利用することも可能です。
寒冷地の建築において温度差のない内部空間を創ることが必然となっている昨今、生活に必要な室は温度差のない快適性を確保しつつも、一昔前の寒冷地建築では当たり前にあった「少し涼しい場所」を+αの空間に計画することで、生活の豊かさにつながるのではないかと考えています。

設計:堀部太建築設計事務所
施工:株式会社 ササキ
撮影:佐々木育弥
 
規模:木造2階建て
面積:延175m2(52坪)