双子山の家
2022.3
北海道札幌市

 札幌市を流れる界川のほとりに計画した、30代ご夫婦と二人のお子さんの4人家族の住居です。敷地は20m程の大きな樹木が生い茂る原生林で、その奥には小川が流れる自然豊かな場所でした。
木漏れ日が差し、川のせせらぎが聞こえ、風が吹くと木々がざわめく心地の良い環境であると同時に、高低差が8m近くもある崖地で、様々な法律的な規制のかかる敷地です。
 敷地奥に広がる自然の風景を広く享受できるような住居を目指し、多種多様な開口が様々な形で風景を切り取る、額縁のような設えの窓や開口を考えました。大きな額縁、小さな額縁、本棚をくり抜いた額縁や、
重層の額縁、奥行きのある額縁…。それぞれの額縁が切り取る風景は、各々の内部空間に違った印象や特徴を与え、個性を隆起させます。
 敷地に入ると奥行きのある額縁から小川のせせらぎを感じる事ができ、リビングの大きな額縁は外にいるような木漏れ日を感じる事ができます。窓を開けて外に設けた川床テラスで心地よい風を感じながら
佇むこともできます。本棚をくり抜いた額縁ではベンチに腰掛け風景と寄り添いながら読書をしたり、カウンターで風景と向き合いながら書物ができ、生活者が額縁の一部となります。
湯船に浸かりながら雪を眺め、寝室では小さく絞った額縁から朝日が差し込みます。セカンドリビングに設けた重層の額縁では、小さな一人だけのベランダでゆっくり小川を眺める事も可能です。
 春や夏は樹木の葉が大きな屋根のように建物に覆い被さり、強い日差しを遮ってくれて、秋は色づいた葉が、建物の白い外壁に彩りを与えます。冬は、小川への視線が抜ける事で身近に水の流れを感じ、
たくさんの日差しが室内に差し込みます。
 敷地の自然豊かな場所性に呼応するように内部空間もおおらかな空間を目指し、水廻りや寝室以外はひと繋がりの大きな空間としました。
開放的で連続性を感じながらも、それぞれの額縁によって、異なる空間が混ざり合う構成となっており、至る所から自然を享受することのできる住居となっています。

設計:堀部太建築設計事務所
施工:コーユー創建株式会社
撮影:佐々木育弥
 
規模:木造2階建て
面積:延154m2(46坪)